美島総合病院の自動ドアを潜り抜けると少なからずだが、活気に溢れる人々の声が私の鼓膜に届いた。



海沿いの道を歩く私に潮風の香りが私の鼻を柔らかく刺激した。



私は小さな『罪』を犯した………………。



私は号君が起こした動物虐待事件の事を警察に打ち明けなかったのだ。



多分、私なりに『罪』という刻印から号君を守りたかったのだろう。



あの事件から私の中で違和感を感じて仕方がないのだが、自分でも何の違和感なのか訳が解らないのだ。



そんな違和感を感じながら私は号君の家の玄関前まで来たのだ。



玄関の横に設置してある呼び鈴のボタンを人差し指で押すと弾力があり、人差し指は押し戻され家の中から機械音が響いた。



呼び鈴を鳴らして数十秒後、玄関の奥から足音が近づいて玄関のドアノブがカチャと音を奏でてドアが開いた。



「あら!!亜美ちゃん久しぶりねぇ〜」



号君のお母さんの美千代さんが玄関から顔を覗かせ、美千代さんは笑顔で歓迎して家の中へと私を招待してくれた。



美千代さんは私が幼い頃からよく可愛がってくれていた。
鼻筋はすっと高くてスタイルも申し分のない美人で、とても40代には見えない容姿だ。



私はリビングに招待され、食卓用のテーブルの椅子に腰を落とした。



久しぶりに号君の家に来たのだが、自分の家のような安心感と愛情が自然と感じられるのだ。



多分、美千代さんの優しさや人間味が家に染み込んでいるのだろうと私は感じた。



美千代さんは私の座っているテーブルの前に紅茶を置いて、私と向かい合う様に正面の椅子に腰を落とした。