静かで緩やかな殺気が部屋の中を少しずつ支配していく、見えない壁が外部の世界を切り離すように。



「あはは、私もここで終わるわけにはいかないのよ。ごめんね、号君………………死んでくれるかなぁ」



須藤愛弓はバタフライナイフを前に突きだし、古くなった床をギシギシと音を奏でながら一歩ずつ、号の方へ近づいていく。



近づいてくる須藤愛弓に向かって号は果物ナイフを放ち、果物ナイフは須藤愛弓の左頬の肉を浅く裂いて、果物ナイフは須藤愛弓の後ろの壁に突き刺さった。



須藤愛弓の左頬から赤黒い液体が顎に向かって一筋流れた。



須藤愛弓は左頬の傷から流れる液体を指でなぞり、奇声をあげながらバタフライナイフを両手で持ち号に向かっていく。



「ぎゃはははは、死ね死ね死ね死ねぇ死んじゃえ」



号は再びジーンズのポケットから果物ナイフを取り出し、狂いながら向かってくる須藤愛弓に号は果物ナイフを握り締めて須藤愛弓に向かって走り出した。



須藤愛弓のバタフライナイフが号の腹部を捕らえた瞬間に号は右に体重を預けて体を右に反らして回避し、号のシャツだけが裂けた。


そして、号は体を反らした状態で果物ナイフで須藤愛弓の横腹を刺した。



刃先から徐々に肉にめり込んでいく感触を感じて、号は笑いながら楽しんだ。



須藤愛弓は瞼を大きく開き号を睨みながら膝をついて倒れた。
倒れた須藤愛弓の横腹から水道の蛇口をひねったように赤黒い液体が溢れて小さな血の池を作った。



静かになった部屋に亜美の壊れた悲鳴だけが部屋に響いた。