「所詮、人間は神の作品の一つに過ぎない。神が人間の命に期限を付けたのは『死』という儚くて美しい絵を空から眺めるためだよ。まぁ、金持ちが絵画を集めるようなもんだ」



亜美は号の話を聞きながら「だからといって人を殺してはいけないでしょ」と震えた声で号に向かって放った。



「誰もが欲望を隠し持っている、それを自分の中に秘めているだけか解き放つかの差なのよ。亜美さんは人を殺してはいけないと言ったけど、亜美さんにも一度はあるずよ。『殺してやりたい』と思った事ぐらい」



亜美は須藤愛弓の発言について言い返すことが出来なかった、誰もが恐ろしい感情を常に隠して生きているのを知っているからだ。



世間的や当たり前という考えからその感情を抑えて生きている人々が当たり前のように溢れている。



誰もが殺人者予備軍みたいなもので、私もその一部だと亜美はどこかで感じていたからだ。



亜美が自分の矛盾に苦戦しているとき、須藤愛弓はバタフライナイフの刃を指でなぞりながら号と亜美を見つめた。



「ねぇ、そろそろ私の幸せのためにあなた達を殺すけどいい??あ!!大丈夫よ、美しく生け贄として神に捧げてあげるからね」



須藤愛弓が言葉を放った瞬間、号がニヤリと薄気味悪い笑顔をしたのを亜美は見逃さなかった。