須藤愛弓はバタフライナイフをカチャカチャと鳴らし、乾いた音を奏でながら僕に向かって呟いた。



「私の幸せを持続させるため、神に生け贄を捧げてるのよ。凄いでしょ??バカな男よね、少し色気を使ったらホイホイと着いてくるんだから」



須藤愛弓は人間の面影を無くし、悪魔のような形相で微笑んだ。



須藤愛弓は暗闇を味方につけて、より一層迫力が増していた。



「遺体の背中に『生贄』と刻んだのは何故なんだい??」



と、僕は須藤愛弓に尋ねてみた。



「あぁ、背中のあれね。神様は空の上に存在してるでしょ、ちゃんと神様に見つけてもらうための目印みたいなものよ。私はあなたに生け贄を捧げるわってね。まぁ、私の美学的センスも含まれてるけどね」



遺体の背中にわざわざ『生贄』と刻むことが須藤愛弓の美学なのだろう。



普通の遺体よりも、背中に『生贄』と刻むことで一つの作品になり遺体を美しく魅せ、さらに周りに恐怖感を与えられる。
確かに美学だと僕は思った。



「確かに、遺体に美学を感じるよ。素晴らしい作品だね須藤さん」



僕が須藤愛弓の作品を絶賛すると須藤愛弓は「でしょ」と言いながら柔らかい笑顔を見せた。



すると、僕の隣に居た亜美が「そんなの美学なんかじゃない」と僕と須藤愛弓に訴え掛けた。



僕は亜美に人間の最高の美学とは何かと尋ねてみたら亜美は「生きること」だと答えた。



僕は亜美に人間にとって最高の美学を教えた。



「人間の最高の美学は『死』なんだよ、人は『死』から始まり『死』で終わるんだ。人間はその『死』のサイクルを繰り返す、『死』は大事な美学なんだよ」



亜美は体を震わせながら、『人間は作品なんかじゃない』と涙ぐみながら僕と須藤愛弓に訴えた。