「…もぉ、エイジの馬鹿ぁ…!」


フェ~ンと泣き出してしまったあたしは、子供みたいで。


だけどエイジは、そんなあたしにキスを降らせる。


やっぱりエイジは、キス魔なんだ。


何も考えられなくなった頭で、そんなことばかりがグルグル回る。



そしてエイジは、戸惑うあたしをよそに、校舎が一望出来る場所まで手を引っ張った。


そして下を見下ろしながら、大きく息を吸う。



『ハイ、注目~!』


「―――ッ!」


瞬間、目を見開いた。



何やってんの…?


だけどエイジは、お構いナシに言葉を続ける。



『俺、亜紀と付き合ってるからー!
邪魔すんじゃねぇぞ!!』


「ギャー!!」


と、声を上げてみたが、やっぱり遅くて。


下からも同じように、女子の“ギャー!!”の声が聞こえてきた。


軽い目眩さえ覚え、あたしはこめかみを抑える。



『…ヨシ。
これでオッケイ♪』


「って、ちょっと待て!!」


満足そうに頷くエイジに、あたしは制止の声を上げる。



『…何?』


「…いや、てゆーか何で、こんなことすんの?」


『…てか、前から思ってたけど、隠さなくても良くない?
これで亜紀も、嫉妬しなくてすむでしょ?
それに、今日みたいに変な男が寄って来る事もないし。』



そ、そんなことのために…?


あたしは明日から、どうやって生きていけと…?