『―――おはよ。』


「―――ッ!
…お…はよ!」


声に驚き、顔を上げた。


こんな風にしてこの場所で、エイジと話すなんてあの時以来だ。


無意識に作った笑顔は、練習通りに出来ているだろうか?


ちゃんと笑ったら、次も練習通りに言わなきゃいけない。



『…てゆーか、話って何?
俺、気になって眠れなかったんだけど。』


「―――ッ!」



え…?


何でそんなこと言うの…?


エイジが、あたしを気にしてくれてたの…?


そんなこと言われたら、言えなくなる。



『…あのさぁ。』


そう言って、エイジはあたしの瞳を捕らえた。


だけどあたしは、振り払うように目を背ける。


そして、練習通りに口を開く。



「…別れよう。バイバイ…。」


『―――ッ!』


瞬間、エイジは予想とは違った。


目を見開き、言葉を失っているような顔を向けられる。



『…何言ってんの?』


やっぱり予想とは全然違ってて。


シュミレーションはバッチリだったはずなのに、その瞬間、頭は真っ白で。


だけど、負けたくなかった。


流されたくなんて、なかったんだ。