次の日、いつもより早く起き、そしていつもより早く学校に向かった。


口角を上げる練習だって、バッチリだ。



“別れよう。バイバイ”


何度も何度も、練習したんだ。


こんな簡単な台詞くらい、笑って言ってやるんだ。



街路樹には、イルミネーションの電飾が飾られていた。


誰かの鼻歌はもちろん、ジングルベル。


街のオブジェはサンタとトナカイ。


まるで街全体がお祭りムードで、夜を心待ちにしているかのように浮き足立っているのが分かる。


今日は、恋人達のクリスマスイブ。



だけどあたしは、走り抜けた。


そんなもの、見たくないんだ。


あたしはこれから、エイジに別れを告げに行くんだ。


先に言われるより前に、あたしから言ってやる。


あのモテ男を、このあたしが振ってやるんだ。


きっとエイジは、悔しがりさえしないだろう。


だけど、そんなこと考えたくなかった。


エイジがあたしのこと好きじゃなかったなんて、考えたくなかった。


だから、走り抜けたんだ。



向かう学校に、まだ人影はまばら。


一目散に教室に向かい、鞄を置いた。


走ってきて乱れた呼吸を整えながら、携帯のストラップだけ握り締め、非常階段に向かう。


一段一段昇る階段は、あの人へと続く道。


だけどその先は、分かれ道なんだ。


少しでも足を止めてしまえば迷ってしまいそうで。


だからあたしは、踏み出す足を止めることはしなかった。