体育館では、運ばれて来た灯油を、魅奈がせっせと撒いている。ただでたらめに撒くのではなく、後々の事もしっかりと考えながら撒いている。魅奈の手は灯油臭くなり、足も灯油まみれだ。
「帰ったら、まずお風呂に入りたい……」
こんな時でも、綺麗好きな魅奈だった。
「よーしこんなもんだろ」
信二はリヤカーに新聞の束を詰め込むと一息ついた。
「おー、お疲れさん」
冴子はパチパチと拍手をすると、信二の頭を撫でた。
「よせよ」
「ま! とりあえず一服するわ」
そう言うと、冴子はタバコを取り出してジッポーで火をつけた。
「こうやって、学校なのに堂々とタバコを吸えるっていうのも、結構いいもんだな」
「こういう状況じゃなきゃ、もっといいんだけとな」
……僅かな沈黙があった。動くものは立ちのぼる紫煙だけだった。
「俺たち、これで助かるんだな」
やがて、ポツリと信二が言った。
「ああ、そうだな。犠牲もたくさん出たけど」
もう一度、冴子は大きく煙を吐き出した。
今日の昼間の屋上での一時と何も変わる所はない。違う所といえば、今、和哉がここにいないことくらいだ。
「平和な学校が、こんな地獄に変わるとはねえ、世の中何が起こるかわからないもんだ」
冴子がぼけた事を言う。
「学校って勉強しに来るとこだよな?」
思わず信二は質問した。
「はは、どうだろな。昼は勉強したり友達とくっちゃべったりする場所で、夜は戦場か?」
言いながらクックックと冴子は笑った。
つられて信二も笑い出した。
「……んっ、来たぞ」
冴子はゆっくりと、リヤカーに乗り込んだ。
「来たって?」
「後ろだよ、後ろ」
信二がHR棟の方を振り返ると、出入り口の所に死神の姿が見えた。
「うわ、やばい」
慌てて信二はリヤカーを動かした。
コンクリートの渡り廊下を、リヤカーは音も少なく走った。
「帰ったら、まずお風呂に入りたい……」
こんな時でも、綺麗好きな魅奈だった。
「よーしこんなもんだろ」
信二はリヤカーに新聞の束を詰め込むと一息ついた。
「おー、お疲れさん」
冴子はパチパチと拍手をすると、信二の頭を撫でた。
「よせよ」
「ま! とりあえず一服するわ」
そう言うと、冴子はタバコを取り出してジッポーで火をつけた。
「こうやって、学校なのに堂々とタバコを吸えるっていうのも、結構いいもんだな」
「こういう状況じゃなきゃ、もっといいんだけとな」
……僅かな沈黙があった。動くものは立ちのぼる紫煙だけだった。
「俺たち、これで助かるんだな」
やがて、ポツリと信二が言った。
「ああ、そうだな。犠牲もたくさん出たけど」
もう一度、冴子は大きく煙を吐き出した。
今日の昼間の屋上での一時と何も変わる所はない。違う所といえば、今、和哉がここにいないことくらいだ。
「平和な学校が、こんな地獄に変わるとはねえ、世の中何が起こるかわからないもんだ」
冴子がぼけた事を言う。
「学校って勉強しに来るとこだよな?」
思わず信二は質問した。
「はは、どうだろな。昼は勉強したり友達とくっちゃべったりする場所で、夜は戦場か?」
言いながらクックックと冴子は笑った。
つられて信二も笑い出した。
「……んっ、来たぞ」
冴子はゆっくりと、リヤカーに乗り込んだ。
「来たって?」
「後ろだよ、後ろ」
信二がHR棟の方を振り返ると、出入り口の所に死神の姿が見えた。
「うわ、やばい」
慌てて信二はリヤカーを動かした。
コンクリートの渡り廊下を、リヤカーは音も少なく走った。