冴子が新聞紙の束をリヤカーから下ろし、信二がそれを中に運ぶ。魅奈はその新聞紙を丸めたり、契ったりして、壁の隙聞やカーテンの下等、燃えやすい物の側に配置して行く。
五分程で、新聞紙は中に運び終わった。
「よし、次行こう。魅奈、ダンナ借りてくよ」
冴子が空のリヤカーに乗り込む。
「行ってらっしゃあい」
元気に手を振る魅奈。
信二は再びリヤカーを引き始めた。
「まったく、かわいい奴だよね魅奈って」
「そうだな、ああいう妹がいたら嬉しいな」
「妹? 彼女じゃなくてか?」
「彼女ね……そうだな。確かに彼女としても理想かな」
冴子は振り上げていた足をゆっくりと下ろした。
「その言葉、魅奈が聞いたら喜ぶよ」
消え入りそうな、小さな声で冴子は言った。
「え、何か言ったか? よく聞こえなかった」
「何でもないよ、それより早く済ませよう」
案外、心配は無用かもしれない。この事件さえ乗り切れれば二人はうまく行くかもしれない。冴子は信二の背中を、ニヤニヤしながら見ていた。
駐輪場のある校舎裏、その隅っこに立てられている灯油庫では、和哉が別のリヤカーに灯油を運び出していた。
間もなく冬を迎えるため、ちょうど最近になって学校側は灯油を大量に仕入れ、ここに保管したばかりだった。
「っかー、たまんねーなこの匂い」
灯油を運びつつ、和哉は独特の匂いを胸一杯に吸い込んでいた。
「おっと、ラリってる場合じゃない、早く運ばねーとな」
ある程度積み込むと、さっそく体育館へと運ぶ事にした。ここから体育館へ行くには図書館側から回り込んで校舎の正面を通って行かなくてはならず、現在一番適任だったのが和哉だった。灯油庫の直ぐ外には例の闇が広がっている。
「もうじきで、こんな世界ともおさらばだ」
リヤカーを引き、体育館へと向かう。
グラウンドの手前の所で和哉は一息ついた。
「信二の方は冴子と一緒だから大丈夫としても、ユリの方は大丈夫かな?」
和哉は再びリヤカーを引いて、体育館へと向かった。
五分程で、新聞紙は中に運び終わった。
「よし、次行こう。魅奈、ダンナ借りてくよ」
冴子が空のリヤカーに乗り込む。
「行ってらっしゃあい」
元気に手を振る魅奈。
信二は再びリヤカーを引き始めた。
「まったく、かわいい奴だよね魅奈って」
「そうだな、ああいう妹がいたら嬉しいな」
「妹? 彼女じゃなくてか?」
「彼女ね……そうだな。確かに彼女としても理想かな」
冴子は振り上げていた足をゆっくりと下ろした。
「その言葉、魅奈が聞いたら喜ぶよ」
消え入りそうな、小さな声で冴子は言った。
「え、何か言ったか? よく聞こえなかった」
「何でもないよ、それより早く済ませよう」
案外、心配は無用かもしれない。この事件さえ乗り切れれば二人はうまく行くかもしれない。冴子は信二の背中を、ニヤニヤしながら見ていた。
駐輪場のある校舎裏、その隅っこに立てられている灯油庫では、和哉が別のリヤカーに灯油を運び出していた。
間もなく冬を迎えるため、ちょうど最近になって学校側は灯油を大量に仕入れ、ここに保管したばかりだった。
「っかー、たまんねーなこの匂い」
灯油を運びつつ、和哉は独特の匂いを胸一杯に吸い込んでいた。
「おっと、ラリってる場合じゃない、早く運ばねーとな」
ある程度積み込むと、さっそく体育館へと運ぶ事にした。ここから体育館へ行くには図書館側から回り込んで校舎の正面を通って行かなくてはならず、現在一番適任だったのが和哉だった。灯油庫の直ぐ外には例の闇が広がっている。
「もうじきで、こんな世界ともおさらばだ」
リヤカーを引き、体育館へと向かう。
グラウンドの手前の所で和哉は一息ついた。
「信二の方は冴子と一緒だから大丈夫としても、ユリの方は大丈夫かな?」
和哉は再びリヤカーを引いて、体育館へと向かった。