「終わったら…………」
エレベーターを降りると、微かに話し声が聞こえる。
カッカッカッ…
静かなホールにはあたしの靴音が響く。
カッカッカッ
あ………
直輝だ……
綺麗な女の人……
微かに聞こえた声は二人のものだった。
そうだよね……
そうだよね……
そんなの初めからわかってる。
彼女?
お客さん?
どちらにしろ……
店の前でこんなに熱いキスをするなんて……
他の人に見られたらどうするんだろうな。
夜咲直のお客さんが見たらきっとショックだよね。
それとも当たり前の事なのかな?
あたしは平気。
何とも思わないよ。
最初から何も期待してない。
カッカッカッ
「結華!」
覚えてたんだ。
「違うんだ結華!」
何?何が違うの?
キス―――
続けてればいいじゃない。
誰かに言いつけたりしないよ?
カッカッカッ
《平気》
あたしは心の中で呟いて、直輝に少し微笑んで見せた。