angel or devil





りおちゃんの症状は少しづつではあるが、確実に回復へと向かい、前より大分言葉も出るようになった。



結華とあの日再会を果たしてから、どのくらいの時が経ったのかすら、わからない程に忙しい日々を送った。



結華と過ごした日々はもう、俺には遠い昔の事のようで



もう二度と戻らない幸せな日々



人生で一番幸せだった日々




今でもこの胸にある想いとは裏腹に




結華は記憶の中の人となりつつあった。






「俺煙草吸ってきますね。」


「うん。後で先生から話があるって。一緒に聞いてくれる?」


「わかりました。」





病院外の喫煙所のベンチに腰をかけ、ポケットから煙草を取り出したものの一本も無く


俺は空き箱をクシャっと握り潰し、近くのコンビニまで買いに行こうと立ち上がると




あれ?結華?




処方箋薬局の前、フラフラと歩く結華の姿があり、俺はとっさに駆け寄った。






「結華?」





俺の声に気付いた結華は
俺に視線を向けているが、その目はグルグルと回り、視点が定まっていない。




結華がよろめいた瞬間――




「結華………!!」




とっさに伸ばした手は間に合わず



結華は地面に倒れ込んだ――




「結華!!しっかりしろよ!!結華!!」




結華を抱いて揺さぶるが反応はなく




「なんだこれ………」




結華の持っていた袋から、倒れた拍子に中から出てきた薬袋が散乱した




「手伝います!」




薬局から出てきた白衣姿の女は、薬を集めて俺に手渡し




俺は結華を抱き抱え、白衣姿の女と共に病院へと入った。





「すいません!!そこの薬局の前で倒れて!!」