「………して………か……して………」



「……………?」



「……かえ……して……返して………!!返してよ――ッ!!!!!」



「香織さん……」



香織さんは足を震わせながらも立ち上がり



「どうしてよ………どうしてよ………!!直くんが………直くんが死ねばよかったのに――――ッ!!」



別人のような顔で俺の肩を掴んだ




「……………」



俺は言葉も出ず、香織さんの顔が見えなくなるくらいに



ただただ涙が溢れた






親父が死んだ時


母親が出て行った時


婆ちゃんが死んだ時





涙なんか出なかった




悲しくなかったわけじゃない




でも涙は出なかった





きっと





大切な人の幸せを奪うと言う事が





自分が不幸せになる事よりずっと





ずっと辛くて





ずっと悲しい







俺は誠さんの命を奪った




俺が誠さんを殺した―――




「人殺し………!!あなたが誠を殺したのよ!!!」



殺した