「香織さん………」


手術室の扉の前で崩れ落ちる香織さんの肩にそっと手を置くと


「ねぇ!!どういう事なの!?どうして誠が!?」


それまで無言で肩をすくめていた香織さんは振り返り、俺の肩を揺らした







香織さんをゆっくりと抱きかかえ、廊下のベンチに座らせ


俺は言葉を詰まらせながらも全てを話した





「………どうしてよ……直くんのせいじゃない………どうして誠が刺されなきゃいけないの………?」



「…………」



それ以上香織さんは何も言わず


ただただ震える手を握り締め、自分の額に押し付けた







それからどのくらい経ったのか




手術中のランプが消えた







香織さんは手術室から出てきた医者に駆けより


「誠は………?誠は………!?」



「手を尽くしましたが既に――」



「嘘………嘘ですよね……?」

「……………」



その後医者は何か言っていたが



きっと



俺の耳にも香織さんの耳にも声は届かなかった





「イヤァァァァァ!!!!!!!!!!!!!」



香織さんは両手で自分のこめかみをギュっと押さえ込むようにしながら



叫び声のような声を上げ



冷たい床に崩れ落ちた