「…」
「あれ、もしかして腰抜けて立ち上がれなかったりする?」
私の様子を見て男はポケットに手を突っ込みながら座り込む私の顔を覗き込んだ。
そして、そのまま目をそらして何も言わない私に…
「ほら」
スッと目の前に手が伸びてきて男が言った。
「立てないんだろ?」
起こしてくれるってこと…?
私はゆっくりとその男の手に自分の手を置いた。
それを確認すると男は軽く手に力を入れ引くように私を立たせた。
やっと立ち上がれた私を目の前に、男はパッと手を放し
「じゃあ」
と言って私に背を向けてどこかへ行ってしまった。
何処かへ行ってしまった男の背中のあとを少しの間ボーっと見つめていた。
だけどすぐにパッといつも通りになって先ほどのことなんて気にしないようにまた普通に街を歩いた。