拓馬が路上でタバコを吹かしていると、一台の黒い車が到着した。


「拓馬様。お迎えに上がりました」


「遅ぇんだよ」


拓馬が車に乗り込むと、発車した。


車の中には、拓馬以外に運転手、黒服のサングラス、そして金の入れ歯の男が乗っていた。


「任務は、片付いたか?」


金の入れ歯の男が言う。


「はい。カメラも、ばっちりです」


拓馬がクロを抱えながら、無気力に答える。


「ジェネラルが、血迷って、一度カメラを壊しました。ですが、すぐに薬草で直しました」


「よくやった。撮影できていないと、意味がないからな。それよりお前には、次の任務に向かってもらう」


「次の任務?」


「とある議員が、邪魔だ。消してもらいたい」


「わかりました。で、ゲームは?」


「『現実アクションゲーム』だ。ここに潜入し、お前はクリアを目指すと同時に議員殺害の任務を平行しろ」


「了解しました。しかし、お言葉ですが……」


「何だ?わしに、意見しようと言うのか?」


「いえ、申し訳ありませんでした……」


俯く拓馬。このままでは、ヤバイ。現実とゲームが融合してきている。


ルイに、俺の体を触られなくて良かった……。触ると、透ける。そうなれば、バレる可能性もある。


同じ場所なのに、同じ場所ではないのだから。


ルイに問いかけたことで、決定的だった。


俺は確かにゲームの世界に居たが、ルイは確実に現実の世界に居た。


ルイは現実の世界で、ゲームの相手と戦っていた。


「おい、拓馬。何を企んでいる」


その様子に気づき、金の入れ歯の男が問いかけてきた。


「いえ、そんな……滅相もない」


「余計なことは考えるな。両親を、殺されたくなかったらな」


「承知しています」


まだ、希望は……ある。ルイとルカという、二人の希望が。


―第2章、完―