【もう会えません。話すこともありません。】

精一杯、冷たい返事をした。
俺のことを嫌いになってくれたらどんなに楽だろう。


【明日、東京に行きます。とにかくもう一度、話をさせてください。】


『けじめ』

まだついていなかった。

このまま沙希に会って、このプレゼントを渡したら…
沙希を傷つけてしまう気がした。


それは、好きじゃない。んじゃなくて、
好きすぎて、少しでも不安を与えてしまうこと。
沙希が遠くにいってしまう気がした。


もう一度だけ、恵莉奈に会おう。
何があってもゆるがない気持ちがある。

調子のいい言い訳かもしれないけど、
もう恵莉奈のこと、好きじゃない。
沙希がいなくても、いつかは別れていた。
そういう運命。


しっかり『けじめ』をつけよう。

まだ、相手があきらめていない事実。
しっかり『けじめ』をつけよう。


そして、もう一度チャンスがあれば・・・・


ライブ会場につき、受付で手紙と花束を渡した。

「ライブ終了後、直接お渡しになりますか?」

「すぐ帰らなければならないので、渡してください。」


歌っている沙希の表情は、
どんな女性より憂いがあって、やさしく語りかけているようだった。

たくさんのファンに囲まれる沙希をみて、

ホントに俺なんかでいいんだろうか。。
弱い弱い俺がブルブル震えてた。

それでも手に入れたいもの。

もう一度、チャンスをもらえるなら…。