頑張ってほしいんじゃない。




「オレは一途で優しい子が好きだよ?お前もホント……そうだった」




「じゃぁ何でよ!?」




そう言って彼女はオレに抱きついた。
オレは一瞬その震えた体に手を添えそうになったけど、その手をギュッと握り締めて拳を作った。
そして彼女の両肩に手を置いて、自分から離した。




「どんなにいい奴でも……オレが好きになれなきゃ意味なんだ」




好きじゃないのに、付き合うなんて事したくない。
そんな酷い奴になんかなりたくない。
でも……今、十分オレは酷い奴。




「好きになれなくてごめんな?でも……人として好きだ」




オレはポンと彼女の頭を叩いて泣いている彼女を置いて歩き出した。




今回のでもう、分かった。
オレはきっと……人を好きになれない。
こうやって傷つけてばっかりで。
泣かせてばっかり。




だからもう……恋なんてしない。
誰も好きにならない。
彼女は作らない。




バイトのないオレは家へと帰った。
もう7時を回っていて、みんな帰って来てるみたいだった。