あたしが泣き止んで落ち着いた事を確認すると、旭はあたしの頭を撫でて口を開いた。




「今日俺……自転車だから取ってくるから」




そう言って、旭は今まで見た事がない優しい笑顔を見せてくれた。
あたしは頷くと、旭は駆け足で去って行った。
それから何分もしないうちに旭は自転車に乗ってやって来た。




「帰るぞ」




そう言って旭は笑う。
あたしはまた頷いて早歩きで歩き出そうとした。




「あっ……」




後ろから何かを思い出したような旭の声がして振り返ると、旭はフッと笑って自転車から降りた。




「え?どうしたの?」




自転車を漕ぎ出さない旭にキョトンとしていると、旭は微笑みながら自転車を押し始めた。




「え?乗らないの?」




いつもなら旭……自転車漕いで行くのに。
意味が分からなくてキョトンとしていると、旭は視線を逸らして頬を赤らめながら呟いた。




「いや……後ろ乗せようかなって思ったんだけど。でも……少しでも長くいたいし」




独り言のように呟いて旭はあたしの横で立ち止まった。
そして片手で自転車を支えてフッと微笑んだ。




「今まで気付かなかったけど……こうやって一緒に歩けば、真姫の速さに合わせられる」