すると旭は小さく呟いた。




「お前……泣いてたから」




後ろから聞こえてくる声が少し震えている。
その声があたしの胸を締め付けて、余計に涙が出た。




「電話の声が……泣くの我慢してた声だった」




何で……バレちゃうんだろう。
頑張ったのに。
頑張って堪えてたのに。




すると旭は歩き出してあたしの前に立ちはだかった。
あたしは顔を見られそうになって、慌てて背中を向けた。




「何で背中向けんだよ」




不機嫌な声。
怒ってる……よね。




「別に理由なんかないよ」




こんな強がり、無駄だよね。
だって声震えてるもん。




すると旭はあたしの腕を掴んで振り向かせると、ギュッといきなり抱きしめてきた。
ものすごい力で振り払う事ができない。




「離……して、旭」




涙が目に溜まる。
それでもあたしは必死で抵抗した。
でも旭は何も言わずにギュッと抱きしめる。