しばらくすると試合は始まり、あたし達は影からその試合を見つめる。
前半20分。
湯田先輩がシュートを決めた。
すると女の子達の歓声が上がり、あたしはあまりのうるささに耳を塞いだ。
「きゃー!!湯田先輩。格好いい!!!」
隣でも興奮している胡桃の声も大きくてあたしは隠れて耳を塞いだ。
湯田先輩……サッカーうまいんだなぁ。
なんて思っているつかの間、前半24分で今度は旭がゴール。
すると女の子の歓声が湯田先輩以上に上がった。
すごい……。旭。
あたしはチームメイト達に囲まれて喜んでいる旭の姿からし線を逸らせなかった。
女の子のファンもたくさんいて。
1年生なのにレギュラーで。
ああやって結果を残して。
旭は……あたし以上に大きくなって。
みんなの憧れになっていって。
あたしを置いて行く。
一緒に遊んでたあたしを……。
1番近かった筈のあたしを置いて行ってしまう。
今じゃ……1番遠い人に感じる。
ものすごく遠い、手の届かない存在に感じる。
どこかそれがショックで、あたしは沸き起こる歓声と悲鳴さえ耳の届かなかった。
こんなに空しくなるのは。
悲しくなるのは。
女の子に嫉妬しちゃうのも全部……。
あたしが……旭を好き、だからなんだ。