すると部屋の扉がノックされた。
「……はい?」
顔をゆっくり上げながら返事をすると、部屋の外から声がした。
「真姫?大丈夫?」
パパだ……。
パパはいつもそう。
あたしが何かあった時、察するのかこうやって声をかける。
あたしは寝転がりながら返事をした。
「大丈夫。ちょっと調子悪くて。風邪気味なのかも」
嘘をついた。
するとパパは扉を開けて顔を覗き込ませた。
そしてあたしを見るとゆっくり部屋に入ってきて、あたしが寝転がっているベッドにしゃがみ込んだ。
ゆっくりとあたしの頭を撫でてパパは口を開いた。
「無理しないんだよ?」
「うん」
そう言ってパパは静かに部屋を出て行った。
あたしの理想は……パパ。
優しくて紳士的なパパが理想なの。
なのに……。
どうしてあたしの頭に思い浮かぶのは。
我が儘ですぐ機嫌が悪くなる旭なの?
ねぇ……この気持ちはなんなの?
ひょっとしてこれが“恋”なの?
でもあたし……今まで恋した事なくて分かんないよ……。