もうちょっと気が利く事言えねぇんかな。
俺は……。




俺は真姫に気付かれないように小さく溜め息をついた。




「そっか……気まぐれ、ね」




真姫の声が下から聞こえてきて見下ろすと、真姫は笑っていた。
笑っているのに、その表情の意味が読み取れない。
その表情に疑問を抱いていると、俺は真姫のスピードに合わせて漕いでいた自転車のバランスを崩した。




「おわっ」




横に倒れそうになって慌てて足を地面につけると、一部始終を見ていた真姫がクスッと笑った。




っく……。見られた。




俺は恥ずかしくて少し頬を赤く染めた。
だから笑いを堪えたまま俺を見つめている真姫を照れ隠しで睨んだ。




「笑うんじゃねー」




「ごめんごめん」




睨んでいると真姫は笑いを堪えたままそう言った。




「人のスピードに合わせて漕ぐのは難しいんだよ。ってか、お前が歩くの遅いのが悪いんだろ?」