虹がいた。

「何か用事か?」

虹に聞かれて、あたしはうつむいた。

「虹こそ、こんなところでどうしたの?」

「こんなところでって、近くに会社があるから。

それに、今帰りだし」

「…そう」

虹が働いている会社が近くにあるんだと、あたしはのん気にそんなことを思った。

「瑞希こそ、どうしたんだ?」

「あたし?

……何にも、ないよ?」

ウソだ。

本当は、あった。

けど虹に知られたくないと思ったのは、あたしのプライドか。