彼が追っている人は、頭の悪いあたしでも想像できた。

あの人は、森藤さんの彼女なんだ。

あたしと森藤さんが話しているのを見たから、彼女は逃げ出した。

それを彼氏である森藤さんが追っていると、想像できた。

森藤さんがいなくなっても、あたしは石にされてしまったかのようにつっ立っていた。

……そりゃ、そうだよね。

森藤さん、美人なんだもん。

世の中の女たちが、黙ってる訳ないじゃん。

それに、彼に恋人がいても、おかしくないよね?

そうやって、自分に言い聞かせようとする。

けど、ね?