彼を見つめながら、そう思ってしまう。

「その…大事なものですから、やっぱり…」

「おい!」

突然森藤さんが大声で叫んだので、あたしはビクッと躰が震えた。

な、何だ…?

と言うか、あたし怒鳴られるようなことした?

「待て!」

えっ、何を待て?

すると、突然森藤さんが走り出した。

あたしは振り返り、森藤さんの後を追おうとした。

「あっ…」

その光景を見た瞬間、あたしは固まってしまった。

パーマがかった茶色の長い髪が揺れている。

それを追うように、森藤さんは走っていた。