「ああ、すまない」

電話口から流れるテナーボイスに、あたしの心臓が思わずドキッと鳴る。

「明日の12時にそちらに向かいます」

「12時って…午後の、ですか?」

あたし、何聞いてる。

真夜中にきたって仕方ないでしょ。

「そうですが、何か不都合が?」

「いえ、全然不都合じゃないです!」

全然不都合じゃないって、どう言う日本語よ…。

日本語の勉強し直した方がいいかも、あたし。

「じゃあ、午後12時におうかがいします」

「はい、お待ちしています」

ブツッと、電話の切れる音がした。