「・・・え、あ、はい・・・。」

可奈子って・・・、
もしかしていとこの満月が言ってた、
優しくて、とってもおしとやかな・・・子か。
まぁ、要するに満月の好きな奴か。

「・・・・えっと、私、先生も言ってたけど、斎藤可奈子って言うの。
 よろしくね?」

「あー・・・・、うん。よろしく。」

確かに、落ち付いた子だ。
・・・・しかし、少し気になることが・・・。

「あのさ、足とか手とか、いっぱい怪我してるけど
 部活かなんかやってんの?」

このとき、可奈子・・・・さんは、一瞬行き先のわからないような顔になって、弱く微笑んだ。

「あ・・・、いや、今日自転車で転んじゃって・・・・。」

これが最初に見せた、彼女の笑顔だった。

俺は可奈子さんとは初対面だったけど、すぐにわかった。
この嘘を・・・。
そして、嘘をついた理由も・・・。
でも、俺は

「嘘だろ?」

なんて、言えなかった。
だから、

「へー、そう。気をつけなよ。」

と、嘘に嘘を重ねてしまった。