いつもの屋上、いつもの風、いつもの距離十センチ。
いつもやかましい彼はいつになく神妙で、あたりを見まわしている。

「大丈夫かな」
「大丈夫だって」

こいつの一世一代の恋、相手は学年一の美女。いくら私が頑張ろうが追い抜くことはおろか、肩を並べることすらできない。

「脈はあるんでしょ」
「まあ一応は」
「早く行ってきな」

いまだに迷っている彼の背中を押した。当たってこい砕けてこい、それでできれば戻ってくんな。






1.押した背中に、さよならさよなら