本来なら有のものを無にするだけの池。

しかし彼が、『わたし』を作り出してしまった。

バラバラにして捨てられた部位を集め、『わたし』という人型の生き物を作り出したのだ。

だから記憶がなかった。

でもデジャブは感じられた。

例え脳が覚えていなくて、体で覚えていることはあったから…。

そして全ての水を吸収した後、わたしは穴から這い上がった。

「助かるよ。今のボクには肉体が必要でね」

「そう…」

「何か言いたいこととかある? 大サービスで聞いちゃうよ」

彼は本当に機嫌良さそうだった。

しかしわたしは首を横に振った。

恨みたい相手は、この身に吸収してしまった。

もう、何も思い残すことはない。