クイナは暗い夜道を歩いていた。

すでに月は空高く浮かんでおり、周囲には人気が無い。

しかしクイナはおびえる様子はなく、真っ直ぐに帰り道を進む。

だが…。

ふと何かの気配を感じ、クイナは立ち止まった。

「…カウ」

呼ぶとクイナの影が動き、黒き犬となった。

カウは歯をむき出し、警戒した様子で目の前の闇を睨みつける。

クイナも思わず身構えた。

「―スゴイね。犬神使いになってから、そう月日は経っていないのに、もうそんなに力を身に付けたんだ」

暗闇の中から、1人の青年が出てきた。

黒づくめの服装、そしてフードの隙間から見える笑う口元。