…冷たい。

ここは冷たくて、とても暗い。

ああ、でも苦しくは無い。

この冷たさが、感情や感覚全てを奪ってくれるから。

だから何にも関わらず、ここにいればある意味、幸せだ。

なのにある日、ここに闇の手が伸びてきた。

そして、『わたし』を掴んで上げた。


―アレ? 一部しか掴めなかったか。
 コレじゃあ、まだ足りないな―


青年の声が、上から振ってくる。

『わたし』の目に映ったのは、黒づくめの青年だった。

―まだ足りない。
 ボクの……になるには、ね―

遠く聞こえる青年の声。

やがて視界もぼやけてきて、『わたし』は意識を手放した。