突然訪れた衝撃について
いけなかった弥嘉はその
場から一歩も踏み出すこ
とが出来なかった。


『さなえちゃんがこちら
の学校にいらっしゃるの
でしょうか?』


一方扉の向こう側にいた
紗奈恵は、弥嘉の動揺を
知る由もなく淡々と自己
紹介を始めようとした。

その光景を見た女性は、
弥嘉の手を引いて教室の
中に勢い良く入った。




ガラガラガラガラーーー
ピシャーーーーーーンッ




「はいよ~あんた達っ!!
今からもう一人紹介する
から静かにしなさい!!」


『……多分あなたが一番
五月蝿いと思います』


弥嘉と、まだ見ぬクラス
メイトの心の声が綺麗に
重なる瞬間だった。




     ***




只今の女性の行動に呆れ
顔を表したのは既に教室
内にいた男性であった。

彼は黒縁眼鏡をかけ直し
ながらわざと大きく溜め
息をついた。


「……生徒の前なんです
からもう少しお静かに」

「あら~もう一人の子は
こっちに来てたのねっ!!
さっきから探してたの」


しかし、女性は尚も自分
のペースを崩すことなく
ひたすらしゃべり倒す。


『ここまで自由奔放な方
が担任で果たして大丈夫
なのでしょうか?』


このやり取りを暫し静観
していた弥嘉は転校早々
一抹の不安を覚えた。