暫くすると、客間からの
話し声が大きくなり遂に
彼女の耳にまで届いた。
「――から……だよ!!」
普段から聞き慣れた父親
のそれとは、明らかに異
なるボーイソプラノの声
が廊下中に響き渡った。
『男の子のお客様とは、
随分珍しいですね……』
そう思いつつも、少女は
賑やかな客間を仕切る障
子の前で一旦立ち止まる
と徐に挨拶を始めた。
「…………失礼します」
彼女がそう言って障子を
開けるなり、突然目の前
を風が吹き抜けていく。
『えっ……白い羽根!?』
少女は、部屋中に舞い上
がる無数の羽根を目の当
たりにして思わずその場
に座り込む羽目になる。
驚きのあまり、少女は薄
茶色の両目を暫し瞬かせ
るも既にそれらはどこに
も見当たらなかった。