ところが、都はすぐさま
元の方へと向き直り弥嘉
を真っ正面に見据えた。


「せやけどそれとウチら
の友情は別物や。なんぼ
離れてても揺らいだりせ
えへんやろ?」


そうして都が思いがけず
発した言葉は、弥嘉の目
を存分に丸くさせた。


「えっ……離れる?都ち
ゃんは、私が帝政律館に
いることをご存知で?」

「さっきそこの兄ちゃん
が“来る?”言うてたか
らなあ。ここまで一緒に
来たっちゅうことはそう
いうことやろ?」

「はっ、はい……」


話していくうちに先程の
寂寥感漂う都の呟きが頭
をよぎると、弥嘉は申し
訳なさで瞬く間に表情を
曇らせていった。

すると、都は何を思った
のか突然勢い良く右手を
振りかざした。




バッシーーーーーーーン




「なぁにシケた面しとん
ねんっ!!しゃんとしいや
しゃんと!!」


前触れなく襲った背中の
痛みに暫し呆然とするも
のの、やがて弥嘉はおず
おずと口を開いていく。


「で、ですけど……」

「自分が決めた道やろ?
いらん気遣いせんと迷わ
ずに進んだらエエやん!!
それに、これくらいの事
でいちいち気にするほど
ウチかてヤワやないで」


弥嘉の中に渦巻く不安を
取り除くように、都は尚
も背中を叩き続けると屈
託のない笑顔を見せた。