今や顔面蒼白のまま頭を
抱えてうずくまる弥嘉を
気にしつつも、壱加は都
に視線を向けると徐に口
を開いていった。
「……なあ、一つだけ聞
いても良いか?」
「か、構へんけど」
その瞬間、双肩を激しく
揺さぶられた記憶が鮮明
に蘇ったため都は不意に
体を強ばらせた。
それを知ってか知らずか
壱加は尚も話を続けた。
「さっきの話で少し出て
きたけど、結局アンタは
帝政律館に来んのか?」
すると、都は一瞬大きく
目を見開いたもののすぐ
さま表情を緩めた。
「あ~……やっぱり行か
へんことにしたわ」
「はいっ!?」
都の将来に関わる話にし
てはあまりにも軽すぎる
発言に、弥嘉は壱加を差
し置いて思わず素っ頓狂
な声をあげた。
一方の都は、その奇行を
さして気にすることなく
言葉を紡いでいった。
「“例の人”と雰囲気が
似てて狙われるんやろ?
なら髪を染めるなりエク
ステを付けるなり、苦手
やけど化粧するなりして
みようと思うんやわ」
「でっ、ですが……」
「弥嘉も知ってるように
堅苦しいのはあんま好か
んねん。それに長官さん
のこともあるから、今は
ドラゴンを守る気分には
どうしてもなられへん」
そう言い終わると、都は
どこか遠くを見つめなが
ら寂しげに微笑んだ。