先程言われた通り壱加が
郵便受けを開くと、そこ
には広告等がはちきれん
ばかりに詰まっていた。
『流石に一週間分だけあ
って、物凄ぇことになっ
てんのなぁ……』
女性のものぐささにほと
ほと呆れた壱加は盛大な
溜め息を漏らした。
その際、今迄激しく地面
を打ちつけていた雨の音
が聞こえなくなったこと
に気が付いた。
『おっ、雨止んでる』
顔を上げてそれを確かめ
るや否や、彼の心は少し
ばかり浮上していった。
***
黒胡椒の香ばしい匂いが
ダイニング全体に漂い始
めた頃、大量の広告等を
抱えた壱加が気だるそう
に入ってきた。
「持ってきたぞ」
「有り難うな~♪でも今
手ぇ離されへんから旦那
宛の親展以外は封切って
音読してくれへん?」
背を向けたまま突如有り
得ない発言をした女性に
壱加は目を丸くした。
「はぁ!?んなこと出来る
わけねぇだろうが!!」
「ウチが、ええっちゅう
てるからええの!!ほら~
早よしてぇな」
最早この女性の前で一般
常識は通じないと悟った
壱加は、仕方なく一番上
にあった黄色い封筒の封
を切って便箋を開いた。
「えっと…………は!?」
音読しようと何気なく目
を通した内容に、壱加は
思わず言葉を失った。