「ほんの冗談やのにいち
いち反応してくれて可愛
いらしい子やなぁ~」


女性はそう言って壱加の
頭を何度となく撫でた。


「…………うるせぇ!!」


その扱いが気に入らなか
ったらしく、壱加は顔を
真っ赤にさせながら彼女
を鋭く睨み付けた。

一方の彼女は、特に気に
するふうでもなくさらに
言い募った。


「恋愛感情が絡んでるか
どうかなんてちょ~っと
見聞きしたら分かるわ!!
ウチかて無駄に歳重ねて
ないで!?とりわけお宅ら
は同志か戦友、はたまた
相棒っちゅうとこやろ?
まるで、ウチと徹ちゃん
みたいな感じやね」

「――徹ちゃん?まさか
徹のことじゃあ……」

「えっ!?いっくん知って
んの!?意外やわぁ~!!」


そう言っておどけた様子
を見せる女性に対して、
壱加は無言の圧力で話を
先へと促した。


「まぁええわ……ウチと
徹ちゃんは小さい頃から
の付き合いだったんよ。
今思えば、何をするんも
一緒やったなぁ」

「――ご苦労なこった」


妙に重みのある壱加から
の労いに、女性は思わず
苦笑を漏らしていた。


「見た目の頑固さを凌ぐ
毒舌家やろ?不幸にも、
やよちゃんはその部分が
少し似てしもたかもしれ
んな……都が“アイツは
見た目裏切る辛辣者や”
ってよお言うてたから」


その直後、女性は僅かに
彼から視線を逸らし遠く
を眺めるかの如く目つき
で昔を思い起こした。

そうして暫しの間物思い
に耽る女性を、彼はただ
呆然と見つめていた。