「……一体いつからそこ
にいたんですか!?」
恐る恐る振り返るなり、
壱加はさも恨めしそうな
表情を彼女に向けた。
「ん~ついさっき♪ここ
の部屋のすぐ隣に台所が
あんねん、ほらあそこ」
一方女性は、それに構う
ことなくあっけらかんと
した口調で言うと、扉の
向こう側を指差した。
「いやぁ~やよちゃんも
隅に置けん子やなぁ」
「………………はい?」
「こないな美少年の知り
合いがおるなんて、聞い
てないわぁ……あ!!敬語
苦手やから、気楽に話し
てくれてかまへんよ」
女性はそう言い終わらな
いうちに腰を屈め、徐に
机の上に紅茶を置いた。
「は、はぁ……」
止まることのない彼女の
話しぶりに気圧されなが
らも、彼は出された紅茶
に早速口をつけた。
それを確認すると、女性
は意地悪そうな笑みを携
えて話題を切り出した。
「そんでいつからアンタ
らは付き合うとるん?」
ぶぅーーーーーーーーっ
あまりにも突拍子もない
発言に、壱加は出された
紅茶を勢い良く噴いた。
「つ、つ……付きぃ!?」
「さっき、やよちゃんの
こと“アイツ”って言う
てたから。あ~でもあの
子結構鈍いからいっくん
の片思いになるんか?」
「は!?えっ!?ちょ……」
自分の預かり知らぬ所で
話だけが一人歩きしてい
ったため、壱加は柄にも
なく慌てふためいた。
ぷっ
「あ~っはははははは!!
いっくんおもろいわぁ」
『は、嵌められたっ!!』
かつてない程の爆笑ぶり
を目の当たりにした途端
彼の顔はみるみるうちに
紅潮していった。