その光と共に、40歳前後
の些かふくよかな女性が
姿を表した。
「まさか、やよちゃんの
お友達がわざわざ雨の中
家に来るとは思わんかっ
たので……先程のご無礼
お許しくださいね?」
インターホンから聞こえ
てきたものとは異なり、
その女性は非常に穏やか
で親しみのこもった声で
壱加に話しかけた。
「いえ、こちらこそ」
それに比べ、彼はあまり
にも先程とはかけ離れた
丁寧な対応に暫し戸惑い
を隠せなかった。
***
壱加は女性に連れられる
まま歩を進めると、ある
場所の前に到着した。
「急なお越しやったから
ここしか片付いてないん
ですけど、まぁゆっくり
してってください」
女性が扉を開けた瞬間、
彼の目には信じられない
光景が飛び込んできた。
白や茶色を主に基調とし
ているこの家には珍しく
通された部屋だけが黒に
統一されている。
そこには、細部までこだ
わったゾンビの模型が所
狭しと並べられていた。
また、血まみれの魔女や
粉砕された骸骨が描かれ
ているポスターが至る所
に貼られ、尋常ではない
おどろおどろしさを存分
に醸し出していた。
「他と雰囲気が違います
やろ?これ娘の趣味なん
ですよ~あっはは!!」
『……いやいや、確実に
今は笑うところじゃなか
ったよな!?っていうか、
都って奴はどんだけディ
ープな人間なんだよ!?』
この部屋に似つかわしく
ない程の陽気な笑い声を
あげる女性に対し、彼は
心の中でツッコミを入れ
ずにはいられなかった。