それを受け、徹は壱加に
わざと曖昧な言葉でぼや
かす物言いをした。
「あの力は、値さえ強け
ればドラゴンの姿を遠隔
地からでも透視出来る」
「……確かにな」
壱加は静かに同意したも
のの、未だにその真意が
掴めないのか僅かに眉間
にシワを寄せた。
それを目にした徹は重い
口を徐々に開いていく。
「何としてもドラゴンを
迫害したい国家側に利用
される危険性があるとは
思わないか?」
「――――!!!!!?????」
「さらに、下手をすれば
そこいらのドラゴンより
希少価値が高いから売買
対象にされてしまう恐れ
も充分に考えられる」
立て続けに言い渡された
あまりにも衝撃的すぎる
発言に、もはや壱加は口
を閉ざすほかなかった。
一方徹はそれに構うこと
なく尚も言い募った。
「弥嘉が“眼”を持って
いるということになれば
遅かれ早かれ狙われるの
は確実だ。もし万が一の
ことがあっても、我が家
では対処しきれない」
「それで、帝政律館か」
「ああ……だがあそこは
ドラゴンにとって有益と
なり得る人材育成を徹底
して行っている学校だ。
能力発覚当初、彼らへの
思い入れが皆無に等しい
弥嘉にとっては少々酷な
場所だった。しかし彼女
が“眼”の保持者と判明
した以上は一刻の猶予も
許されない。そこで多少
強引でも、手っ取り早く
且つ誰もがある程度納得
出来るような理由付けを
せざるを得なかった」
その発言により、壱加は
今までの徹の行動によう
やく得心がいった。
「だから、俺にアイツを
つけたってわけか」
「ご名答……弥嘉が守護
者になれば、日常生活に
おいては彼女の身の安全
が保障され、また壱加の
欲求も満たされる。まし
てや、一緒にあの学校に
入るとなれば尚更だな。
ついでに、割合は低いが
私の夢も叶えられる」
悪びれもなくそう言い切
った徹に、壱加は開いた
口が塞がらなかった。