不意に見せた徹の余裕の
笑みに悔しさを覚えて、
壱加はその感情のままに
思わず口走った。
「――弥嘉に例の事件に
ついて調べるようせがま
れたりはしたのかよ!?」
いきなり核心をつく質問
をぶつけられ、徹は暫し
戸惑いを隠せなかった。
「まあな……だから一応
すぐに調べたが、まさか
ここまで高度な政治性が
絡んでいるとはな」
明らかに表情を曇らせた
徹の様子を知りつつも、
壱加は尚も責め立てた。
「その時には、勿論言わ
なかったんだよな!?」
「当たり前だ。一般人の
娘をそう易々と巻き込む
ほど愚かではない。第一
言ったところで余計悲し
ませるだけだろうが」
先程とは一変して僅かな
迷いすらない凛とした声
で言い切る徹に、壱加は
苛立ちを募らせた。
「何で今になって、わざ
わざこんな真似をした!?
アイツを悲しませること
に変わりはねぇだろ!?」
「だから私の夢を叶えて
欲しいからだと……」
「それは結果論だろ!?」
事の真相をはぐらかそう
とする徹に、壱加はかつ
てない程の憤りを感じて
鋭い叫び声をあげた。