ようやく店を出ると冷気
を含んだ風が彼女達の頬
を優しく撫でた。

また大通りに規則正しく
植えられた紅葉や銀杏は
既に見頃を迎え、足元や
空に彩りを添えていた。

そのような中で、何の気
なしに歩いていた弥嘉は
都が抱えている人形に目
をやりつつ呟いた。


「相変わらずですね」

「まぁ~こればっかりは
しゃーないわ!!でも弥嘉
くらいやで?ウチの趣味
知ってても引かへんの」

「今更、都ちゃんの奇人
ぶりをとやかく言うつも
りはありませんから」

「正直なやっちゃなぁ~
……ってもうちょいオブ
ラートに包まんかい!!」


あまりにも歯に衣着せぬ
発言に、都は苦笑しつつ
絶妙なタイミングでツッ
コミを入れた。


「――人選ミスですよ」


それに対し、弥嘉は些か
意地悪そうに微笑んだ。


「しっかし……アンタも
相当見た目を裏切る性格
しとるわ。初めに会うた
時は、もっと大人しい奴
かと思っとったけど」

「いや、今でも暴れたり
ベラベラ話す方ではあり
ませんよ?ですが、相変
わらず人見知りが激しい
ので友達を作るにしても
非常に苦労しますしね」


自嘲気味にそう呟く弥嘉
を見て、都は突如思い出
したように口を開いた。


「アンタ、つい最近友達
出来たって騒いどったや
ないの!!え~っとサナエ
ちゃんやっけ?めっちゃ
べっぴんさんなんやろ!?
一遍見てみたいわぁ~」


まだ見ぬ美人に心ときめ
かせる都に対して、すか
さず弥嘉が口を挟んだ。


「機会があれば一応彼女
を紹介しますけれども、
くれぐれもとばしすぎな
いでくださいよ?」


幼なじみの入念すぎる釘
の刺し様に、都は大きく
溜め息をついた。




この時の彼女達は、物陰
から複数の双眼鏡が鋭く
光っていたことなど知る
由もなかった。