『――コの字型に並べら
れた本棚なんて、ありま
したっけ?』


弥嘉は些か疑問を抱いた
ものの、結局壱加と共に
目的地へと向かった。




そこに到着すると以前と
同様に、背の高い本棚が
所狭しと並んでいた。


「うっわ……本ばっか」


見渡す限りの書物の山を
前にして、彼はただただ
呆然と立ち尽くした。

それに対し、弥嘉は例の
本棚を探すべくひたすら
辺りを見回していた。


「壱加……後がつかえて
いるのでそろそろ本棚を
探して貰えませんか?」

「――ホンっトこういう
時だけは気ぃ短ぇのな~
もっとゆとり持てよ!!」

「流石に普段の壱加には
負けますけどね」

「ああっ!?てめぇこの俺
に喧嘩売ってんのか!?」

「売ってはいませんよ?
紛れもない事実です」

「――やっぱり売ってん
じゃねぇかっ!!そっちが
その気なら、正々堂々と
買ってやんよ!!かかって
きやがれってんだ!!」

「別に行きませんから。
とにかく今は本棚探しが
優先ですので、ここまで
ついてきたからには壱加
も協力してくださいよ」


小声で話そうとするなけ
なしの試みさえ掻き消す
ほど、双方の言い合いは
無常にも部屋中にこだま
していた。