その様子を眺めながら、
壱加は言葉を紡いだ。
「ところで、何でそれが
図書館にねぇんだ?別に
名簿の一つや二つくらい
構わねぇと思うがな」
彼の問いかけを受けて、
弥嘉は懸命に記憶を辿り
つつ徐々に口を開いた。
「――何かで少し見たこ
とがあるのですが、どう
やらその本は王制を肯定
するものだとして、既に
一般の図書館では所蔵が
禁じられているのだそう
です。しかしAクラス以上
の方々の多くは我が国の
歴史を伝える貴重な資料
として、今も大切に保管
しているとか」
壱加はその説明を聞いて
ようやく納得したのか、
「そっか」と一言呟く。
***
「これで、ようやくあの
部屋に入れるな!!本っ当
に長い道のりだった~」
「壱加は、殆ど何もして
いないじゃないですか」
あっけらかんとした口調
で話す彼を、弥嘉は些か
恨めしそうに見やった。
「細かいことは気にすん
なよ!!行けるならそれで
良いじゃねぇか!!な!?」
「まあ……そうですが」
一応同意はしたものの、
弥嘉は尚も腑に落ちない
顔をしていた。