「じゃあ、何でそれだと
特定出来たんだ?」


弥嘉の思案顔をよそに、
壱加は若干急かすように
訊ねてきた。

すると、未だ疑問を抱え
ながらも弥嘉は段階的に
説明していった。


「まずは一行目ですが、
“王”を皇帝と言い換え
ます。“書物を焚く”は
所謂焚書のことですね。
その彼が焚書を行える、
つまりこの時は帝政期で
あると言えます」

「帝政?――まさか!!」

「はい。帝政は正にこの
学校、帝政律館を表して
います。また本は焚書に
より灰と化しています」




「つまり、帝政律館には
鍵になる書物はないって
ことなのかよっ!?」




「はい、その通りです」


驚きのあまり思わず声が
裏返った壱加に、弥嘉は
至極冷静に答えた。




「続いて二行目ですが、
“盾”は先程の壱加の話
にも出てきた“守護者”
を象徴するものです」

「じゃあ“眠れる”って
何だよ!?寝てたら戦地で
死んじまうだろ!?」


壱加は実に的外れな言葉
で弥嘉をまくし立てた。

それに対し、彼女は徐に
注意事項のとある部分を
指差した。


「――Aランク以上の守護
者又は顧問?」

「そうです。彼らは所謂
名誉職の方々であるため
戦地等に赴いたりはしま
せん。実務は全てBランク
以下が受け持ちます」

「今や眠れる者、か」


彼が無意識にそう呟くと
弥嘉は黙って頷いた。


「では、そのような彼ら
が“汝”に“指し示す”
のですから?」


彼女の問いかけを受け、
壱加は徐々に口を開く。




「鍵の本は、ソイツらが
持ってる可能性があると
いうこと……か?」




疑念を含む彼の言葉に、
弥嘉は先程よりも大きく
首を縦におろした。