壱加の手には、父親のID
カードと入念に書き込ま
れた手書きの図書リスト
が握られていた。
「下敷きにされた時に、
偶然見つけた。もう言い
逃れは出来ねぇよな!?」
その言葉を聞くや否や、
弥嘉は膝の上に握り拳を
つくり静かに俯いた。
「私個人の問題ですから
無関係な壱加を巻き込む
わけにはいきません」
「――今更だろ」
「それでも!!これだけは
譲ることが出来ません」
頑として話そうとしない
彼女に、壱加は最終手段
とばかりに口を開いた。
「紗奈恵が結構心配して
たけど?最近お前が根詰
めてるから、様子を見る
ように頼まれた。守護者
の事情は良く分からない
から、だとよ?」
その瞬間弥嘉は思い切り
目を見開き顔を上げた。
「人を巻き込みたくねぇ
気持ちは分からないでも
ねぇけど……話さないと
余計な心配をかけること
もあるってのをいい加減
自覚しやがれっ!!」
壱加が鋭くそう叫ぶと、
弥嘉の目から僅かに涙が
滲み出てきた。