「あ、あの!!もし宜しけ
れば私の首に腕を回して
貰っても良いですか?」
「………………はあ!?」
壱加は、弥嘉の唐突且つ
脈絡のない申し出に対し
思わず顔をしかめた。
「あのぉ、出来れば早く
してくれませんか?」
「……へいへい」
あまりの急かし様に困惑
しながらも、壱加は仕方
なく言う通りにした。
すると突然、壱加の足が
床から離れていった。
「――――!!!!!?????」
「壱加はやはり軽いよう
ですね。もう少し食べた
ほうが宜しいですよ?」
「なっ……何してくれて
んだよ!?早く降ろせ!!」
所謂“お姫様抱っこ”に
抵抗するため、彼は手足
を激しくばたつかせた。
「すぐ保健室に着きます
からもう少し静かにして
ください。足に響いたら
どうするんですか?」
「この際響いてもいい!!
だから早く降ろせっ!!」
「“怪我人”は、看病さ
れてなんぼのもんなので
すから今は大人しく抱き
かかえられてください」
「そんなん知るかよっ!!
いいからお~ろ~せ~」
壱加の羞恥混じりの悲痛
な声が、静かすぎる廊下
にこだました。