いよいよ桜が満開を迎え
寮の窓からも一層、その
色鮮やかさが窺えるよう
な時期に差し掛かった。
ここにきて、寒さもよう
やく一段落し暖かな風が
優しく頬をなでていく。
そのような中で、壱加は
不自然な程に閉めきった
部屋のドアを何の前触れ
もなく開け放った。
「――何してんだ?」
「えっ、ちょっと……」
弥嘉が声をかけた瞬間、
床と机に積み上げられた
多くの書物がバサバサと
音を立てて崩れ落ちた。
それと同時に、壱加は無
残にもその下敷きとなり
果ててしまった。
「――んだよこれっ!!」
「だっ、大丈夫ですか?
どこかお怪我などはされ
ていませんか?」
「多分平気……っ痛!!」
慌てふためく弥嘉を制止
しようとすると、壱加の
左足に激痛が走った。
「どうか、しました?」
「……………足捻った」
「そんな……ほ、本当に
本当にすみません!!」
壱加の呟きを聞くなり、
弥嘉は顔を真っ青にして
ひたすら平謝りをした。