「ところで、そんな熱心
に何を調べていたの?」
図書館を出た後、寒さが
身に染みる廊下を早足で
歩きながら紗奈恵は徐に
弥嘉に訊ねた。
すると弥嘉は少し考えた
後に次第に口を開いた。
「ええっと、ここに入る
きっかけになった人の事
を少し調べていて」
「ああ……前に、弥嘉が
言っていたやつね?」
転校前に交わされた話を
思い出しながら紗奈恵は
ぼんやりと呟いた。
一方弥嘉は、その様子を
眺めつつ話を続けた。
「はい。彼女は私の幼な
じみで“柏木都”という
方なのですが、約3年前に
行方不明になられて以来
消息が掴めないのです。
父曰わく、守護者になれ
ば手掛かりが見つかると
のことでしたので早速調
べてみましたが……」
そこまで言い切る頃には
いつの間にか弥嘉の目に
涙が浮かんでいた。
それを暫し静観していた
紗奈恵は、何も言わずに
彼女の肩を軽く叩いた。