その様子に若干苛つきを
覚え始めた壱加は、既に
彼女に凄んでいた。
「だからっ!!“壱加様”
ってのいい加減止めろ!!
俺の方がどう見ても年下
だろうが!!遠慮すんな」
「で、ですが……」
「――っあ~!!俺が良い
って言ってんだからつべ
こべ言うな!!俺のことは
呼び捨てでいいから!!」
「い、いきなり呼び捨て
なんて、出来るわけない
じゃありませんか!!」
そう言って弥嘉は壱加の
申し出に対し首を何度も
左右に振った。
その答えを受けた壱加は
あまりにも突飛なことを
口走った。
「……じゃあ弥嘉が呼び
捨てするまで俺は学校に
行くつもりないから!!」
「なっ、何ですかそれ」
「もし俺が学校行かずに
あの家にいたら今回より
誘拐が頻繁に起こったり
徹が抗争に巻き込まれて
傷つくかもしれねぇな」
「――――!!!!!?????」
壱加の意地悪そうな目が
弥嘉を更に追い詰める。
暫し沈黙していたがよう
やく意を決した弥嘉は、
壱加を正面に見据えた。
「い………………壱加」
あまりの恥ずかしさで、
弥嘉の顔は熱を帯びた。
一方壱加はまさか彼女が
本気で呼ぶと思っていな
かった為、不覚にも顔を
真っ赤に染めていた。
「ま、まぁ……これから
色々宜しく頼むわ」
「は、はい」
その後、どちらからとも
なくお互いに握手を交わ
していた。
2人の間にはどこかぎこち
ない空気が流れており、
暮れなずむ夕日が彼らを
優しく照らしていた。
――少女はこの日から、
龍の真の相棒となる――
【Chapter.5 奪還】 完